相場は「算定表」でおおよそわかる
友人から「養育費ってどう決めればいいのか分からない」と相談されたのは、去年の秋のことだった。離婚すること自体はもう決めていて、彼女が困っていたのは「相手が提示してきた金額が妥当なのかどうか判断できない」ということだった。一緒に調べていくうちに、養育費には裁判所が使っている「算定表」という目安があること、そして本当に大事なのは金額を決めることよりも「どう確実に受け取り続けるか」だということを知った。
家庭裁判所の実務で使われている養育費・婚姻費用の算定表は、支払う側と受け取る側それぞれの年収、子どもの人数と年齢を当てはめると、月額のおおよその範囲がわかるようになっている。ネット上には、この算定表をもとにした自動計算ツールもいくつか公開されていて、大まかな相場感をつかみたいときには使いやすい。
ただし算定表の数字はあくまで「目安」で、実際の金額は子どもの進学予定、私立か公立か、持病や習い事の有無、双方の生活状況などによって上下する。友人のケースでも、算定表の範囲の中に収めつつ「進学時の費用は別途協議する」という一文を加える形に落ち着いた。金額の最終判断は算定表の数字だけで決めず、個別の事情を踏まえて自治体の相談窓口や弁護士に確認しながら詰めていくのが安心だと思う。
「口約束」で終わらせないための公正証書
友人が一番時間をかけたのは、取り決めを公正証書という形に残す作業だった。口約束や自分たちで作った合意書だけだと、後から相手が支払いを止めてしまったときに、すぐ給料や預金を差し押さえる手続きに進めない。「強制執行認諾文言」付きの公正証書にしておけば、あらためて裁判を起こさなくても、強制執行の申立てに進むことができる。
公正証書は、最寄りの公証役場に元夫婦そろって出向き、合意した内容と双方の収入資料(源泉徴収票や確定申告書の写しなど)、本人確認書類を持参して作成してもらう。手数料は養育費の金額や支払い期間(最長10年分として計算されることが多い)によって変わるので、事前に公証役場へ電話やメールで見積もりを聞いておくと、当日の手続きがスムーズになる。友人の場合は、先に合意事項をメモにまとめてから公証役場に相談したことで、やり取りにかかる時間をかなり短縮できた。
公正証書に盛り込む内容は、毎月の金額と支払日・振込先だけでなく、支払い期間(子どもが何歳になるまでか)、進学や病気など特別な費用が発生した場合の扱い、面会交流の取り決めなど多岐にわたる。何を書き込むべきか迷う部分は、行政書士や弁護士に文案を確認してもらうと抜け漏れを防ぎやすい。
2026年からの制度変更も知っておきたい
2026年4月からは民法が改正され、離婚時に養育費の取り決め自体をしていなかった場合でも、子ども1人あたり月額2万円を「法定養育費」として暫定的に請求できる仕組みが新設される。あわせて、養育費の債権には「先取特権」が認められるようになり、公正証書などの書類がなくても、取り決めの内容を記した文書さえあれば差し押さえの申立てがしやすくなる見込みだ(差し押さえ額の上限は子ども1人あたり月額8万円とされている)。
とはいえ、これらはあくまで「取り決めをしていなかった場合の最低限のセーフティネット」であって、実際の生活費を考えれば、算定表をもとにきちんと話し合い、公正証書として残しておくに越したことはない。制度は今後も変わっていく可能性があるので、手続きを進める時点での最新情報を確認することも忘れないでほしい。
支払いが止まったときのための備えも
公正証書を作ったからといって、必ず支払いが続く保証があるわけではない。友人の周りでも、数年後に相手の入金が止まったという話を何件か聞いた。そうなったときに頼りになるのが、公正証書に「強制執行認諾文言」が入っていれば利用できる強制執行の申立てだ。2020年の改正民事執行法により、裁判所を通じて相手の勤務先や預金口座の情報を取得できる「財産開示・情報取得手続き」も使いやすくなっており、相手が転職して連絡が取れなくなった場合でも、給与や口座の差し押さえにつなげやすくなっている。
最近では、未払いが起きたときに保証会社が立て替えてくれる「養育費保証サービス」を利用する人もいる。保証料はかかるし、契約前の未払い分は対象外になるなど条件もあるので、仕組みをよく確認したうえで、必要に応じて弁護士や行政書士に契約内容を見てもらうと安心だ。この点は改めて別の記事で詳しく取り上げたいと思う。
迷ったら、まず窓口に相談してみてほしい
養育費の金額も、公正証書に盛り込むべき内容も、家庭ごとの事情でかなり変わってくる。ここに書いたのはあくまで一般的な流れであり、実際に手続きを進める際は、お住まいの自治体のひとり親相談窓口や法テラス、弁護士・行政書士といった専門家に、ご自身の具体的な状況を伝えて確認してほしい。友人も、公正証書の文言を最終的に整える段階では行政書士に相談し、内容を仕上げていた。
金額の目安を知ること、そして「まずは相談窓口に一度聞いてみる」という小さな一歩から、始めてもらえたらと思う。

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