離婚の相談を受けていると、「親権」「財産分与」「年金分割」という3つの言葉がいつもセットで出てくる。どれも「話し合いで決めればいい」と思われがちだけれど、実際には決め方の物差しがそれぞれ違う。友人の離婚に付き合いながら調べてわかったことを、自分の頭の整理も兼ねてまとめておきたい。
親権は「子の利益」という一点で決まる
親権者を誰にするかで揉めるケースは多いが、裁判所が判断の物差しにしているのは「子の利益」というただ一つの基準だ。具体的には、父母それぞれについて監護に対する意欲や能力、健康状態、経済的・精神的な家庭環境、居住や教育の環境、子への愛情の程度、周囲の援助を受けられるかどうかなどが見られる。あわせて、子ども自身の年齢や性別、兄弟姉妹との関係、心身の発育状況、これまでの環境にどれだけ適応しているか、環境の変化にどれだけ対応できそうか、そして年齢によっては子ども自身の意向も考慮される。
かつては「母性優先の原則」が強く意識されていたが、今はそれだけで決まるわけではない。裁判所が重視するのは「監護の継続性」で、別居前から現在まで実際に子どもの世話をしてきた実績のある親が優先されやすい傾向がある。そのため、母親が親権を得られないケースや、逆に父親が親権を取得するケースも、以前より珍しくなくなってきている。
加えて、2026年4月からの改正民法により「共同親権」という選択肢が新たに加わった。離婚時に父母の話し合いで単独親権か共同親権かを決め、折り合わなければ家庭裁判所が「子の利益」の観点から判断する仕組みだ。ただし、DVや虐待のおそれがある場合、両親の対立が激しく話し合い自体が成り立たない場合、一方と連絡が取れない場合などは単独親権が選ばれることになっている。制度が始まったばかりで実務の運用もこれから積み上がっていく段階のため、共同親権を検討する場合は特に、家庭裁判所や弁護士に個別の状況を相談しながら進めることをおすすめしたい。
財産分与は「2分の1」が原則、2026年から条文にも明記
財産分与は、結婚生活の中で夫婦が協力して築いた財産を、離婚時に清算する制度だ。実務では、どちらがどれだけ稼いでいたかにかかわらず、原則として2分の1ずつに分けるという「2分の1ルール」が長く定着してきた。住宅ローンのように婚姻生活のためにやむを得ず負った債務は、マイナスの財産として分与額の計算に反映されることもある。一方で、独身時代から持っていた財産や、婚姻中でも相続などで自分名義として得た財産は「特有財産」として、原則、分与の対象から外れる。
2026年4月に施行された改正民法では、この2分の1ルールが「各自の寄与の程度が明らかでないときは相等しいものとする」という形であらためて条文に明記された。あわせて、財産を隠している疑いがある相手に対して裁判所が情報の開示を命じられる「情報開示命令」の制度も新設され、財産分与の請求期間も「離婚した日の翌日から2年」から「5年」に延長された。ただし、この5年ルールが適用されるのは2026年4月1日以降に離婚した場合で、それより前に離婚が成立している場合は従来どおり2年となる点には注意してほしい。
年金分割は「合意分割」と「3号分割」の2種類
年金分割は、婚姻期間中に納めた厚生年金の保険料納付実績を夫婦で分け合い、それぞれの将来の年金額に反映させる制度だ。大きく分けて、夫婦の話し合いや裁判手続きで分割の割合を決める「合意分割」と、専業主婦(主夫)期間などに対応する「3号分割」の2種類がある。合意分割では按分割合を夫婦で話し合って決められるが、上限は2分の1と決まっている。
この年金分割にも請求期限があり、こちらも2026年4月の制度改正で「離婚した日の翌日から2年以内」から「5年以内」へと延長された。財産分与と同じく、2026年4月1日以降に離婚した場合は5年、それより前に離婚した場合は従来どおり2年が適用される。期限を過ぎると原則として請求できなくなってしまうため、離婚の話し合いの中でうやむやにせず、早めに年金事務所や専門家に相談しておくことをおすすめしたい。
手続きの入り口としては、まず年金事務所で「年金分割のための情報通知書」を取り寄せるところから始まる。この通知書には婚姻期間中の厚生年金の記録が記載されていて、合意分割の話し合いや、調停・裁判で按分割合を決める際の資料になる。友人も、離婚の話し合いを本格化させる前にこの通知書を取り寄せておいたことで、財産分与や養育費の話と切り離して年金の話を進められたと言っていた。
制度は変わっていく。まずは最新情報の確認を
親権も財産分与も年金分割も、法律の条文だけで機械的に答えが出るものではなく、家庭ごとの事情によって結論が変わってくる。とくに2026年は制度改正が重なった年でもあるので、いつ離婚が成立したか(成立する予定か)によって適用されるルールが変わる場合がある。ここに書いたのはあくまで一般的な考え方の整理であり、個別の状況については、家庭裁判所の手続案内窓口や年金事務所、弁護士などの専門家に確認しながら進めてほしい。
制度の全体像を知っておくだけでも、いざ相談窓口に足を運ぶときの心構えはずいぶん変わってくると思う。

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